クラウドファンディング支援のリターンが一時所得になる場合の「特別控除額50万円」適用ガイド
クラウドファンディング支援のリターンと一時所得
クラウドファンディングでプロジェクトを支援し、その対価としてリターン(返礼品など)を受け取った場合、このリターンの経済的価値が税務上「一時所得」として扱われるケースがあります。特に、購入型クラウドファンディングにおいて、支援金額に対して明らかに価値の高いリターンを受け取ったり、支援金額を大きく超えるリターンを受け取ったりした場合などがこれに該当し得ます。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質を有しない一時の所得を指します。生命保険の一時金や懸賞の賞金なども一時所得に含まれます。
一時所得の計算方法
一時所得の金額は、以下の計算式で求められます。
一時所得の金額 = 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)
この計算式の「特別控除額(最高50万円)」が、クラウドファンディング支援による一時所得を計算する上で非常に重要なポイントとなります。
一時所得の特別控除額50万円とは?
一時所得には、所得税法によって「特別控除額」として最高50万円が認められています。これは、一時的な収入に対して一律に適用される控除額であり、年間の一時所得の合計額から差し引くことができます。
この特別控除額は、一時所得の総収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引いた残額が50万円より少ない場合は、その残額が控除額となります。つまり、最高で50万円まで控除できるという意味です。
例えば、年間を通してクラウドファンディング支援のリターン以外に一時所得がない場合、クラウドファンディング支援による一時所得の「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額」の金額が50万円以下であれば、この特別控除額によって一時所得の金額がゼロになる可能性が高く、課税対象とならないケースが多くなります。
特別控除額50万円の具体的な適用方法
特別控除額50万円は、その年(1月1日から12月31日まで)に得た一時所得の合計額に対して適用されます。
もしあなたが複数のクラウドファンディング支援で一時所得に該当するリターンを受け取ったり、クラウドファンディング支援以外にも一時所得(例えば生命保険の満期保険金など)があったりする場合、それらすべての一時所得に関する「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額」を合計し、その合計額から最高50万円の特別控除額を差し引きます。
計算ステップは以下のようになります。
- 各一時所得ごとの計算: それぞれの収入について、「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額」を計算します。
- 例1:CF支援A → リターンの価値 8万円 - 支援金額 5万円 = 3万円
- 例2:CF支援B → リターンの価値 15万円 - 支援金額 10万円 = 5万円
- 例3:生命保険満期 → 受取金額 120万円 - 支払保険料総額 100万円 = 20万円
- 年間の一時所得の合計額の計算: 手順1で計算した金額をすべて合計します。
- 例の場合:3万円 + 5万円 + 20万円 = 28万円
- 特別控除額の適用: 手順2で計算した合計額から、特別控除額(最高50万円)を差し引きます。
- 例の場合:28万円(合計額) - 50万円(特別控除額) = -22万円
- この金額が一時所得の金額となりますが、マイナスになる場合は一時所得の金額はゼロとなります。
- もし合計額が60万円だった場合:60万円 - 50万円 = 10万円(一時所得の金額)
課税される一時所得の計算
一時所得はその金額の1/2が、給与所得などの他の所得と合算されて総所得金額となり、所得税の計算が行われます。
計算式は以下のようになります。
課税される一時所得の金額 = (総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額) × 1/2
上記の計算例(合計額28万円)の場合: (28万円 - 50万円) × 1/2 = 0円(課税される一時所得)
上記の計算例(合計額60万円)の場合: (60万円 - 50万円) × 1/2 = 10万円 × 1/2 = 5万円(課税される一時所得)
この計算からわかるように、年間の一時所得の「総収入金額 − 収入を得るために支出した金額」の合計額が50万円以下であれば、原則として課税される一時所得はゼロとなります。
確定申告書への記載
計算した課税される一時所得の金額は、確定申告書の「一時所得」の欄に記載します。給与所得など他の所得がある場合は、それらの所得と合算して税額が計算されます。
確定申告書には、一時所得に関する詳細を記載する箇所(「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄など)がありますので、収入の種類(クラウドファンディングのリターンなど)、支払者の氏名・名称、収入金額、必要経費などを正確に記載する必要があります。
まとめ
クラウドファンディング支援によるリターンが一時所得に該当する場合、税金計算において年間最高50万円の特別控除額を適用できる点が重要です。この控除があるため、リターンの価値から支援金額を差し引いた額が年間合計で50万円以下であれば、多くの場合、一時所得に対する税金はかかりません。
ご自身のクラウドファンディング支援によるリターンの価値や、他に一時所得がないかなどを確認し、正確に計算を行うことが大切です。計算方法や申告書の記載方法で不明な点がある場合は、国税庁のウェブサイトを確認するか、税務署に相談することをお勧めします。正確な情報に基づき、適切に確定申告を行いましょう。