クラウドファンディング支援と他の収入がある場合、確定申告はどうする?申告が必要か不要かの判断と具体的な手続きを解説
クラウドファンディングで応援したいプロジェクトに支援をされた会社員の方で、給与所得以外に他の収入もある場合、「確定申告は必要になるのだろうか?」「どのように手続きすればよいのだろうか?」と不安に感じていらっしゃるかもしれません。
確定申告に不慣れな方にとって、税務に関する手続きは複雑に感じられるものです。特に、複数の種類の収入がある場合は、ご自身の状況に合わせて申告の要否を判断し、正しい方法で申告を行う必要があります。
この記事では、クラウドファンディング支援から得られる可能性のある収入の考え方と、会社員の方が給与所得以外に他の収入がある場合に確定申告が必要となるケース、そして具体的な手続きの流れについて、分かりやすく解説します。
クラウドファンディング支援による収入の税務上の考え方
まず、クラウドファンディング支援から得られるものについて、税務上どのように考えられるかを確認しましょう。クラウドファンディングにはいくつかのタイプがあり、受け取るもの(リターン)によって税務上の扱いが異なります。
- 寄付型: 特定のプロジェクトや活動への支援を目的とし、リターンが感謝のメッセージや活動報告など、経済的な価値が低いか全くないものです。この場合、原則として支援した側は税務上の収入は得ません。ただし、プロジェクトが特定の条件を満たしている場合、支援した金額が「寄付金控除」の対象となる可能性があります。寄付金控除を受ける場合は確定申告が必要になります。
- 購入型: 商品やサービスなどのリターンを受け取るものです。これは、事前に商品やサービスを予約購入したと考えるのが一般的です。受け取ったリターンの経済的価値が支援した金額を大きく上回る場合、その差額が「一時所得」とみなされる可能性があります。
- 投資型: 事業の利益分配や株式、融資の利息などのリターンを得るものです。この場合、受け取る利益は「配当所得」や「利子所得」、あるいは「事業所得」などとして課税対象になる可能性があります。
会社員の方がクラウドファンディング支援から得る可能性がある収入として一般的なのは、購入型で受け取るリターンが一時所得とみなされるケースや、投資型での配当・利益分配などです。
会社員が確定申告をしなければならないのはどんな時?
会社員の方は、通常、勤務先で年末調整が行われるため、ご自身で確定申告をする必要がない場合が多いです。しかし、以下のような場合には、確定申告を行う必要があります。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合
- 給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合
- 給与を2ヶ所以上から受けており、年末調整をされなかった給与の収入金額と、他の給与所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている場合
- 災害減免法により源泉徴収税額の猶予などを受けている場合
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている場合
これらのうち、クラウドファンディング支援やその他の副業、アフィリエイト、原稿料、講演料、不動産収入など、多くの会社員の方に関係するのは「2. 給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合」です。
クラウドファンディング支援による収入と他の収入がある場合の確定申告の判断
さて、クラウドファンディング支援から一時所得(または他の所得)が発生し、かつ給与所得以外の他の収入もある場合、確定申告が必要かどうかの判断は、原則として「給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えるかどうか」で行います。
ここで注意が必要なのは、クラウドファンディング支援による一時所得の計算方法です。一時所得は、収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引き、さらに特別控除額(最高50万円)を差し引いて計算します。
一時所得の金額 = 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)
この計算の結果が一時所得の金額となります。そして、確定申告の際には、この一時所得の金額の2分の1の金額を、他の給与所得以外の所得と合算します。
例えば、
- クラウドファンディング支援のリターンによる一時所得が、特別控除50万円を差し引いた後で80万円だった場合、確定申告の対象となる一時所得の金額は 80万円 × 1/2 = 40万円 です。
- 他にアフィリエイト収入による雑所得が10万円あったとします。
この場合、給与所得以外の所得の合計額は、一時所得(40万円)+雑所得(10万円)= 50万円 となります。この50万円は20万円を超えるため、確定申告が必要となります。
もし、クラウドファンディング支援による一時所得が、特別控除50万円を差し引いた後で40万円だった場合、確定申告の対象となる一時所得の金額は 40万円 × 1/2 = 20万円 です。
- 他にアフィリエイト収入による雑所得が10万円あったとします。
この場合、給与所得以外の所得の合計額は、一時所得(20万円)+雑所得(10万円)= 30万円 となります。この30万円は20万円を超えるため、確定申告が必要となります。
一時所得の計算で特別控除50万円を差し引いた結果、金額がゼロまたはマイナスになる場合は、原則として一時所得は発生しないことになります。この場合、クラウドファンディング支援による一時所得については確定申告の対象とはなりません(ただし、他の収入が20万円を超える場合はそちらで申告が必要になることがあります)。
ご自身の給与所得以外の所得(クラウドファンディング支援による一時所得の1/2の金額 + その他の収入)の合計額が20万円を超えるかどうかが、確定申告が必要かどうかの重要な判断基準となります。
確定申告が必要と判断された場合の具体的な手続きステップ
給与所得以外の所得の合計額が20万円を超えるなどして確定申告が必要になった場合、以下のステップで手続きを進めます。
ステップ1:必要書類の準備
確定申告には、ご自身の収入や支出に関する様々な書類が必要です。以下の書類を準備しましょう。
- 源泉徴収票: 勤務先から受け取ります。年末調整済みのものであることを確認してください。
- クラウドファンディング支援に関する書類: リターンや利益の金額、それを得るためにかかった費用が分かる書類(クラウドファンディング事業者からの通知、取引明細、購入時の記録など)。寄付金控除を受ける場合は、プロジェクト実行者や仲介事業者から発行される「寄附金の受領証明書」が必要です。
- その他の収入に関する書類: 副業やその他の所得(アフィリエイト収入、原稿料、不動産収入など)に関する収入や経費が分かる書類(支払調書、帳簿、領収書など)。
- 各種控除に関する書類: 医療費控除なら医療費の領収書や明細書、生命保険料控除なら保険料控除証明書、iDeCoやふるさと納税などを行っている場合はその証明書など。
- マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
ステップ2:申告書の作成
準備した書類をもとに、確定申告書を作成します。確定申告書にはA様式とB様式がありますが、会社員の方が給与所得以外の所得を申告する場合は、一般的に申告書B様式を使用します。
- 申告書第一表、第二表: 収入の種類、所得の金額、所得控除の額などを記載します。
- 所得の内訳書: 一時所得や雑所得など、給与所得以外の所得の内訳を記載します。クラウドファンディング支援による一時所得がある場合は、ここに収入金額、支出した金額、特別控除額などを記載し、一時所得の金額を計算します。
- その他必要に応じて提出する書類: 医療費控除の明細書、寄附金控除に関する書類(寄附金の受領証明書など)、保険料控除証明書などを添付または提示します。
申告書の作成は、税務署のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが最も一般的で便利です。画面の案内に従って金額等を入力していけば、税額などが自動計算されます。
ステップ3:申告書の提出
作成した確定申告書は、管轄の税務署に提出します。提出方法にはいくつかの方法があります。
- e-Tax(電子申告): 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成したデータを、インターネットを通じて送信する方法です。自宅から手続きができ、添付書類の一部提出省略などのメリットがあります。マイナンバーカード方式やID・パスワード方式があります。
- 郵送: 作成した申告書を税務署に郵送する方法です。
- 税務署の時間外収受箱への投函: 税務署に設置されている収受箱に投函する方法です。
- 税務署の窓口へ提出: 税務署の開庁時間内に窓口に提出する方法です。
e-Taxでの申告が、最もスムーズで推奨される方法です。
ステップ4:納税または還付の手続き
確定申告の結果、税金を納める必要がある場合は、定められた期限までに納税を行います。納税方法には、振替納税、e-Taxによる電子納税、クレジットカード納付、コンビニ納付など様々な方法があります。
逆に、税金が還付される場合は、指定した金融機関口座に振り込まれます。
申告時の注意点
- 期限厳守: 確定申告の期間は、通常、毎年2月16日から3月15日までです(曜日の関係で前後することがあります)。この期間内に申告書の提出と納税を済ませる必要があります。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。
- 書類の保管: 収入や支出を証明する書類は、申告後も一定期間(原則7年間)保管しておく義務があります。
- 情報収集: 税法は改正されることがあります。最新の情報は国税庁のウェブサイトなどで確認するようにしましょう。
- 困ったときは相談: 確定申告の手続きで不明な点がある場合は、一人で悩まずに税務署の相談窓口や電話相談、税理士などに相談することも検討しましょう。
まとめ
会社員の方がクラウドファンディング支援による収入と給与所得以外の他の収入がある場合、それらの「給与所得・退職所得以外の所得の合計額」が20万円を超えるかどうかが確定申告の要否を判断する際の重要な基準となります。
クラウドファンディング支援からのリターンが一時所得となる場合は、50万円の特別控除を差し引いた金額の2分の1を他の所得と合算して計算します。
確定申告が必要な場合は、必要書類を準備し、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などを利用して申告書を作成し、期限内に提出・納税を行いましょう。
初めての確定申告や複数の収入がある場合の申告は複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ手順を確認しながら進めれば、必ず手続きを完了させることができます。この記事が、あなたの確定申告手続きの一助となれば幸いです。