会社員が迷わない!クラウドファンディング支援の確定申告、第一表と第二表の記入箇所【所得タイプ別解説】
はじめに:クラウドファンディング支援と確定申告書の記入
応援したいプロジェクトにクラウドファンディングで支援した会社員の方が、確定申告が必要になったとき、「どこに何を書けばいいのか?」と悩むことは少なくありません。特に、普段は会社任せで確定申告に慣れていない方にとっては、申告書の様々な欄を見て戸惑ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、クラウドファンディング支援によるリターンについて確定申告を行う会社員の方のために、主に使われる確定申告書B様式の第一表と第二表において、所得の種類ごとにどこに記入すれば良いのかを分かりやすく解説します。
ご自身の支援がどの所得に該当するか、また確定申告が必要かどうかについては、別の記事で詳しく解説していますので、そちらもご参照ください。ここでは、すでに確定申告が必要と判断され、申告書の記入を進める方向けに説明を進めます。
確定申告書B様式とは?第一表と第二表の役割
会社員の方が、給与所得以外の所得(副収入など)がある場合に確定申告を行う際に使用するのが「確定申告書B様式」です。この様式は主に以下の二つの表から構成されています。
- 確定申告書 第一表: 所得の種類ごとの金額、所得から差し引かれる金額(所得控除)、税金の計算、納める税額などを集計して記入する、いわば「税額計算のまとめ」の用紙です。
- 確定申告書 第二表: 第一表の内訳や詳細を記入する用紙です。例えば、給与所得やその他の所得の支払者、社会保険料控除や生命保険料控除の内訳、扶養親族に関する情報などを記載します。クラウドファンディング支援に関する所得についても、その内訳を第二表に記載することが一般的です。
クラウドファンディング支援リターン:所得タイプ別の記入箇所
クラウドファンディング支援によるリターンは、その性質によって税務上の扱いが異なります。主なものとしては、「一時所得」「雑所得」が考えられます。また、寄付型クラウドファンディング支援の場合は「寄付金控除」の対象となることがあります。
ご自身の受け取ったリターンがどのタイプに該当するかを事前に確認しておきましょう。
1. 一時所得に該当する場合の記入箇所
購入型クラウドファンディングで、支援額に対して返礼品(リターン)の価額が著しく高額である場合など、一時所得に該当することがあります。一時所得は、年間50万円の特別控除額があり、申告対象となるのは「(収入金額 - 支出金額)- 特別控除額」の1/2の金額です。
- 確定申告書 第一表:
- 「収入金額等」欄の一番右にある「一時」の欄に、リターン(収入)の総額を記入します。
- 「所得金額」欄の一番右にある「一時」の欄に、計算した一時所得の金額((収入金額 - 支出金額 - 特別控除額)× 1/2)を記入します。
- 確定申告書 第二表:
- 「所得の内訳(所得の種類・所得が生ずる場所・氏名・名称等)」欄に記入します。
- 「所得の種類」には「一時所得」と記入します。
- 「所得が生ずる場所・氏名・名称等」には、支援したクラウドファンディングのプラットフォーム名やプロジェクト名を記入します。
- 「収入金額」には、第一表の収入金額等「一時」に記入した金額を記入します。
- 「源泉徴収税額」には、もし源泉徴収されている場合はその金額を記入します(クラウドファンディングでは源泉徴収されないケースが多いです)。
- 「所得に関する説明」欄に、どのようなリターンであるかなどを簡潔に記載すると分かりやすいでしょう。
2. 雑所得に該当する場合の記入箇所
購入型クラウドファンディングで、役務提供の対価や継続的なリターンである場合、あるいは投資型クラウドファンディングの分配金など、雑所得に該当することがあります。雑所得は「総収入金額 - 必要経費」で計算されます。
- 確定申告書 第一表:
- 「収入金額等」欄の「その他」欄のうち、「雑」の項目の「その他」の箇所に、リターン(収入)の総額を記入します。
- 「所得金額」欄の「その他」欄のうち、「雑」の項目の「その他」の箇所に、計算した雑所得の金額(総収入金額 - 必要経費)を記入します。
- 確定申告書 第二表:
- 「所得の内訳(所得の種類・所得が生ずる場所・氏名・名称等)」欄に記入します。
- 「所得の種類」には「雑所得」と記入します。
- 「所得が生ずる場所・氏名・名称等」には、支援したクラウドファンディングのプラットフォーム名やプロジェクト名などを記入します。
- 「収入金額」には、第一表の収入金額等「雑所得」に記入した金額を記入します。
- 「源泉徴収税額」には、もし源泉徴収されている場合はその金額を記入します。
- 「所得に関する説明」欄に、どのようなリターンであるか、必要経費の内容などを簡潔に記載すると分かりやすいでしょう。
3. 寄付金控除の対象となる場合(寄付型CF支援)の記入箇所
寄付型クラウドファンディングで、支援先が国や地方公共団体、特定の公益法人など、税額控除の対象となる団体である場合、寄付金控除を受けることができます。
- 確定申告書 第一表:
- 「所得から差し引かれる金額」欄の「寄付金控除」の箇所に、計算した寄付金控除額(その年に支出した特定寄付金の額の合計額 - 2,000円など。上限あり)を記入します。
- 確定申告書 第二表:
- 「寄付金控除に関する事項」欄に記入します。
- 「寄付先の名称等」には、支援したプロジェクトの実施主体名(学校法人やNPO法人など)を記入します。
- 「寄付金の額」には、支援した金額(寄付金受領証明書に記載された金額)を記入します。
- 「摘要」欄に、プロジェクト名などを記載すると分かりやすいでしょう。
その他の記入箇所
確定申告書には、上記以外にも様々な記入箇所があります。クラウドファンディング支援に関連して記入が必要になる可能性のある主な箇所としては、以下のものが挙げられます。
- 収入金額等 - 給与: 会社から受け取った給与の総額(源泉徴収票の「支払金額」)を記入します。
- 所得金額 - 給与: 給与所得控除を差し引いた後の給与所得の金額を記入します。
- 所得から差し引かれる金額(所得控除): 社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除など、ご自身が該当する所得控除の額を計算して記入します。これらの情報は、会社の年末調整で受け取った源泉徴収票や、各種証明書に基づいて記載します。
- 税金の計算: 所得金額の合計から所得控除の合計を差し引いた「課税される所得金額」に税率をかけて所得税額を計算し、「所得税額」欄に記入します。
- その他 - 源泉徴収税額: 会社からの給与や、もしクラウドファンディングのリターンで源泉徴収されているものがあれば、その合計額を記入します。これは、すでに納めている税金であり、最終的な納税額から差し引かれます。
これらの項目は、クラウドファンディング支援以外の収入や控除によって記入方法が異なりますので、ご自身の状況に合わせて正しく計算・記入する必要があります。
まとめ
クラウドファンディング支援によるリターンを確定申告する場合、受け取ったリターンの税務上の性質(一時所得、雑所得、寄付金控除など)に応じて、確定申告書B様式の第一表と第二表の特定の欄に正しく記入することが重要です。
- 一時所得や雑所得に該当する場合は、第一表の収入金額等・所得金額の該当欄と、第二表の所得の内訳欄に記入します。
- 寄付金控除を受ける場合は、第一表の寄付金控除欄と、第二表の寄付金控除に関する事項欄に記入します。
申告書の作成は、国税庁の確定申告書等作成コーナーなどを利用すると、画面の案内に従って入力することで自動計算されるため便利です。しかし、どの情報をどこに入力すれば良いか、ご自身の状況に合わせて判断する必要があります。
もし記入方法に不安がある場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談することも検討してください。この記事が、会社員の方がクラウドファンディング支援に関する確定申告書の記入を進める上での一助となれば幸いです。