クラウドファンディング支援の確定申告、必要書類と具体的な記入方法
クラウドファンディング支援と確定申告:申告が必要な場合の次のステップ
クラウドファンディングで応援したいプロジェクトに支援を行った後、「確定申告はどうすれば良いのだろう?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。特に、確定申告自体が初めてであったり、税務の手続きに不慣れであったりする場合、専門用語や複雑な記入方法に抵抗を感じてしまうこともあるでしょう。
このサイトでは、クラウドファンディング支援と確定申告の関係について、分かりやすく解説することを目的としています。既に「クラウドファンディング支援が確定申告の対象となるか、必要か不要か」についての基本的な判断基準はご理解いただけているものとします。(まだ判断に迷う方は、関連の記事でご確認ください。)
この記事では、「クラウドファンディング支援について確定申告が必要である」と判断された場合に、具体的にどのような書類を準備し、確定申告書のどの部分に、どのように記入すれば良いのかを、初心者の方にも理解できるように丁寧にご説明します。
確定申告の準備:まずは必要な書類を揃えましょう
確定申告を行うためには、様々な書類が必要になります。クラウドファンディング支援に関する申告に必要な主な書類は、支援の形式(寄付型、購入型など)や税務上の扱いによって異なります。
寄付型クラウドファンディングの場合
プロジェクトによっては、特定の団体(認定NPO法人や大学など)への「寄付」という形で支援を受け付ける寄付型クラウドファンディングがあります。このような支援が税法上の「寄付金控除」の対象となる場合、確定申告で寄付金控除を適用することで税金が軽減される可能性があります。
必要な書類としては、主に以下のものが挙げられます。
- 寄付金の受領を証明する書類(領収書など)
- クラウドファンディングのプラットフォームやプロジェクト実行者から発行される、あなたが寄付を行ったことを証明する書類です。名称は「領収書」「寄付金受領証明書」「感謝状」など様々ですが、税務申告に使用できる旨が記載されているか、事前に確認することが重要です。
- これらの書類は、通常、プロジェクトが成立し、あなたが支援を行った後に送付されるか、プラットフォームのマイページからダウンロードできるようになっています。
購入型クラウドファンディングで「一時所得」に該当する場合
購入型クラウドファンディングでは、支援へのお返しとして、プロジェクトの成果物や特別なリターン(特典)を受け取ることが一般的です。このリターンが、支援額に対して経済的な価値を著しく有する場合、その経済的価値が税法上の「一時所得」とみなされることがあります。
一時所得に該当するかどうかの判断は複雑ですが、もし一時所得として申告が必要な場合は、以下の書類が必要となることがあります。
- リターンの内容や経済的価値を証明できる書類
- 支援したプロジェクトの内容、受け取ったリターンの詳細、支援額などが確認できる書類です。クラウドファンディングプラットフォームの支援履歴ページや、プロジェクトページ、プロジェクト実行者からの連絡内容などがこれにあたる場合があります。
- これらの書類は、リターンが一時所得に該当するかどうかの判断や、収入金額、必要経費を計算する際に根拠となります。
その他のケース
クラウドファンディングには様々な形式があり、上記以外の税務上の扱いとなる場合もあります。ご自身の支援がどの形式に該当し、どのような税務上の扱いになるか不明な場合は、プラットフォームのFAQを確認したり、プロジェクト実行者にお問い合わせたりすることも有効です。
いずれの形式であっても、支援した事実や受け取ったもの、支払った金額などを証明できる書類は大切に保管しておきましょう。
確定申告書への具体的な記入方法
必要な書類が揃ったら、いよいよ確定申告書への記入です。確定申告書にはいくつか種類がありますが、会社員の方などがクラウドファンディング支援に関する所得や控除を申告する場合、多くは「確定申告書A」または「確定申告書B」を使用します。ここでは一般的な記入箇所について解説します。
寄付金控除を申告する場合(主に寄付型)
寄付金控除を適用する場合、主に以下の箇所に記入します。
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確定申告書 第一表
- 「所得から差し引かれる金額」の欄にある「寄付金控除」の項目に、計算した寄付金控除の額を記入します。
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確定申告書 第二表
- 「寄付金控除に関する事項」の欄に、寄付先の名称(クラウドファンディングのプロジェクト名や団体名)、所在地、寄付した金額などを記入します。これは、第一表の「寄付金控除」の金額の内訳を示すものです。
寄付金控除額の計算:
寄付金控除額は、以下のいずれか低い方の金額から2,000円を差し引いた金額です。
- その年に支出した特定寄付金の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
例えば、特定寄付金に該当する寄付を年間で1万円行った場合、控除額は (10,000円 - 2,000円) = 8,000円となります(総所得金額等の40%以下である場合)。計算が複雑な場合は、国税庁のウェブサイトや確定申告ソフトなどを活用すると便利です。
一時所得を申告する場合(主に購入型の一部)
購入型クラウドファンディングのリターンが一時所得に該当する場合、以下の箇所に記入します。
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確定申告書 第一表
- 「所得金額」の欄にある「一時所得」の項目に、計算した一時所得の金額(所得金額に算入される金額)を記入します。
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確定申告書 第二表
- 「所得の内訳(一時所得、雑所得、総合課税の譲渡所得及び一時所得)」の欄にある「一時所得」の項目に、収入の種類(クラウドファンディングのリターンなど)、所得の生じた場所、収入金額、必要経費などを記入します。
一時所得の金額計算と申告対象額:
一時所得の金額は、以下の式で計算されます。
(総収入金額 - 収入を得るために支出した金額) - 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
クラウドファンディングのリターンにおける「収入を得るために支出した金額」には、通常、そのリターンを得るために支払った支援金の一部などが該当すると考えられますが、具体的な判断はケースバイケースです。
計算した一時所得の金額のうち、その年の総所得金額に算入されるのは、この金額の「2分の1」です。確定申告書 第一表の「一時所得」の欄に記入するのは、この1/2にした後の金額です。
会社員の方の場合、給与所得以外の所得(一時所得を含む)の合計額が年間20万円以下であれば、確定申告が不要となるケースが多いですが、これはあくまで一般的なルールです。医療費控除などで確定申告を行う場合は、20万円以下でも申告が必要になることがありますのでご注意ください。
申告書類の提出方法
確定申告書の記入が終わったら、税務署へ提出します。提出方法には主に以下の3つがあります。
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e-Tax(電子申告)
- 国税庁が提供するシステムを利用して、インターネット経由で申告する方法です。マイナンバーカード方式やID・パスワード方式などがあります。自宅から手続きできるため便利です。
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郵送による提出
- 作成した確定申告書を所轄の税務署に郵送する方法です。通信日付印が提出日とみなされます。
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税務署の窓口へ持参
- 所轄の税務署の窓口に直接提出する方法です。
どの方法を選んだ場合でも、必要な添付書類(寄付金の受領を証明する書類など)を忘れないようにしてください。e-Taxの場合は、書類の提出を省略できる場合がありますが、その場合でも手元に保管しておく必要があります。
まとめ:クラウドファンディング支援の確定申告手続き
クラウドファンディング支援に関する確定申告は、支援の形式によって税務上の扱いが異なり、必要な書類や記入箇所も変わってきます。
- 寄付型で寄付金控除の対象となる場合: 寄付金の受領証明書を準備し、確定申告書の「寄付金控除」欄に記入します。
- 購入型で一時所得に該当する場合: リターンの内容や支援額がわかる書類を準備し、一時所得を計算して「一時所得」欄に記入します(計算した一時所得の1/2の金額を申告)。
どちらのケースでも、支援した事実や金額、受け取ったものを証明できる書類は必ず保管しておきましょう。
確定申告の手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、ステップごとに必要な書類を揃え、申告書の該当箇所を確認しながら進めれば、自身で手続きを行うことは十分に可能です。不明な点があれば、国税庁のウェブサイトを確認したり、税務署の相談窓口を利用したりすることもできます。この記事が、あなたのクラウドファンディング支援に関する確定申告の手続きを進めるための一助となれば幸いです。