会社員向け:クラウドファンディング支援の確定申告をスムーズに進める手順
会社員でもクラウドファンディング支援で確定申告が必要?基本を理解する
会社員として普段お勤めの場合、確定申告は会社が行う年末調整で完了することがほとんどです。しかし、給与所得以外の収入があった場合や、特定の控除を受ける場合には、ご自身で確定申告を行う必要があります。
クラウドファンディング支援は、その性質によっては税務上の所得として扱われたり、特定の控除の対象となったりするため、場合によっては確定申告が必要になります。特に、普段確定申告に馴染みのない会社員の方は、「どうすればいいのだろう?」と戸惑われるかもしれません。
この記事では、会社員の方がクラウドファンディング支援を行った場合に、確定申告が必要になるケースや、実際に申告する際の具体的な手順について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
クラウドファンディング支援と税務上の分類
クラウドファンディングにはいくつかの種類があり、それぞれ税務上の扱いが異なります。会社員の方が支援する場合に特に関係しやすいのは、主に以下のタイプです。
1. 寄付型クラウドファンディング
特定の活動やプロジェクトに資金を「寄付」する形式です。リターンとして、活動報告や感謝状などが送られることが一般的です。 税務上は、支援したプロジェクトの実施団体が「特定公益増進法人」や「認定NPO法人」などの要件を満たしている場合、「寄付金控除」の対象となる可能性があります。この控除を受けるためには、確定申告が必要です。
2. 購入型クラウドファンディング
プロジェクトオーナーの商品やサービスを事前に「購入」する形式です。支援金額に応じたリターン(商品やサービス)を受け取ります。 この場合、基本的には商品の購入やサービスの対価とみなされるため、支援した側(会社員)には税金は発生しません。ただし、受け取ったリターンの経済的な価値が支援金額を著しく上回る場合など、例外的に「一時所得」とみなされる可能性もゼロではありませんが、一般的なケースでは申告は不要です。
3. 投資型クラウドファンディング
プロジェクトへの「投資」として資金を提供し、分配金や売却益などの金銭的なリターンを目指す形式です。 これは一般的に「雑所得」や「譲渡所得」などとして課税対象となる可能性が高いですが、会社員の方が個人で行うクラウドファンディング支援としては、寄付型や購入型がより一般的です。ここでは、会社員の方に関係しやすい寄付型と購入型を中心に解説します。
会社員が確定申告をすべきか判断する基準
クラウドファンディング支援を行った会社員の方が、確定申告が必要になるかどうかは、主に以下の2点から判断します。
1. 寄付金控除を受けたい場合(寄付型)
寄付型クラウドファンディングへの支援が寄付金控除の対象となる場合、この控除を受けて税金(所得税・住民税)を安くするためには、確定申告を行う必要があります。 寄付金控除の対象となる団体かどうかは、プロジェクトページや領収書(寄付を証明する書類)などで確認できます。確認できない場合は、プロジェクトオーナーに問い合わせるか、国税庁のウェブサイトなどで該当団体が寄付金控除の対象法人等に該当するかを確認する必要があります。
2. 一時所得が発生した場合(主に購入型やその他の形式)
購入型クラウドファンディングのリターンが、経済的に見て支援金額を大きく超える価値を持つ場合など、例外的に「一時所得」とみなされる可能性があります。 この「一時所得」は、他の所得(給与所得など)とは別に計算され、以下の計算式で求められます。
(収入金額 - 支出金額) - 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
この一時所得の金額がプラスになった場合、さらにその金額の1/2が、給与所得など他の所得と合算されて税金が計算されます。
会社員の場合、給与所得以外の所得(一時所得や雑所得など)の合計額が年間20万円を超える場合に、原則として確定申告が必要です。 クラウドファンディング支援による一時所得だけでなく、副業収入や生命保険の満期金など、他の給与所得以外の所得も全て合算して20万円を超えるかどうかを判断します。
したがって、クラウドファンディング支援から生じる所得が一時所得に該当し、かつ他の給与所得以外の所得と合わせて年間20万円を超える場合は、確定申告が必要となります。ただし、一時所得には最高50万円の特別控除があるため、受け取ったリターンの価額から支出金額を差し引いた金額が50万円以下であれば、一時所得の金額は0円となり、その一時所得だけでは確定申告は不要になるケースが多いです。
まとめると、会社員の方がクラウドファンディング支援で確定申告が必要になる主なケースは、以下のいずれかに該当する場合です。
- 寄付金控除の適用を受けたい場合(金額に関わらず申告が必要です)
- クラウドファンディング支援から得た一時所得を含め、給与所得以外の所得の合計額が年間20万円を超える場合
ご自身のケースがどちらに当てはまるか、まずは確認してみましょう。
会社員のための確定申告ステップ
確定申告が必要だと判断した場合、具体的にどのような手続きが必要になるのでしょうか。会社員の方が行う一般的なステップを追って説明します。
ステップ1:必要書類を準備する
確定申告には、ご自身の所得や控除を証明するための書類が必要です。
- 給与所得の源泉徴収票: 会社から発行されます。年末調整が終わっている場合は、この書類で給与所得が証明されます。
- クラウドファンディング支援に関する書類:
- 寄付型で寄付金控除を受ける場合: プロジェクトオーナーや実行者から発行される「寄付金の受領を証明する書類(領収書など)」が必要です。この書類が寄付金控除の対象となることを示す文言や、団体の情報が記載されているか確認しましょう。
- 一時所得が発生した場合: 支援した金額を証明できる書類(支払い履歴など)や、受け取ったリターンの価額が分かる資料などが必要になる場合があります。
これらの書類は、確定申告書を作成する際に必要になるだけでなく、税務署から問い合わせがあった場合に提示を求められることがありますので、大切に保管しておきましょう。
ステップ2:申告書を作成する
確定申告書は、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが便利で一般的です。画面の案内に従って入力していけば、自動的に計算が行われ、書類を作成できます。
- 作成開始: 国税庁のウェブサイトから「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」を選びます。
- 申告内容の選択: 「所得税」を選び、提出方法(e-Tax、郵送など)を選択します。
- 利用者情報の入力: 氏名、住所などを入力します。
- 所得の入力:
- 給与所得: お手元にある源泉徴収票を見ながら、収入金額や源泉徴収税額などを正確に入力します。
- 寄付金控除を受ける場合: 「寄付金控除」に関する入力画面に進みます。準備した「寄付金の受領を証明する書類」を見ながら、寄付先の情報(名称、所在地など)や寄付金額を入力します。複数の団体に寄付している場合は、それぞれの情報を入力します。
- 一時所得を申告する場合: 「一時所得」に関する入力画面に進みます。収入金額(受け取ったリターンの価額など)、その収入を得るためにかかった支出金額(支援金額など)を入力します。特別控除額50万円は自動計算されることがほとんどです。
- 所得控除・税額控除の入力: 該当する生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCoやつみたてNISAなどの情報を入力します(年末調整で反映済みの項目は不要な場合が多いですが、医療費控除など追加で申告したい控除があればここで入力します)。寄付金控除もここで計算されます。
- 税額の計算: 入力した情報に基づいて、納める税金または還付される税金が自動的に計算されます。
- 申告書の確認・提出方法の選択: 作成された申告書の内容を確認します。提出方法(e-Tax、郵送、窓口提出など)を選択し、手続きを進めます。
ステップ3:申告書を提出する
作成した確定申告書を税務署に提出します。主な提出方法は以下の通りです。
- e-Tax: インターネットを利用して申告する方法です。マイナンバーカード方式やID・パスワード方式などがあります。自宅から提出でき、添付書類の一部を省略できるなどのメリットがあります。会社員の方で初めて確定申告をする場合でも、比較的利用しやすい方法です。
- 郵送: 作成した申告書を印刷し、必要書類のコピー(源泉徴収票、寄付金の受領証明書など)を添付して税務署に郵送します。
- 税務署の窓口: 税務署に直接持参して提出する方法です。
申告期間は通常、毎年2月16日から3月15日までです。この期間内に申告・納税を済ませる必要があります。
確定申告時の注意点とよくある質問
- リターンの価額評価: 購入型クラウドファンディングで受け取ったリターンが一時所得に該当する場合、その「収入金額」となるリターンの経済的な価額をどのように評価するかは難しい場合があります。一般的には、その市場価格などを参考にするなどが考えられますが、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談することをお勧めします。
- 複数のクラウドファンディング支援: 複数のプロジェクトを支援している場合、それぞれの支援について税務上の扱いを確認し、寄付金控除や一時所得の対象となる場合は、合算して申告する必要があります。
- ふるさと納税との違い: ふるさと納税も寄付金控除の対象となりますが、制度上の取り扱いに一部違いがあります。クラウドファンディング支援とふるさと納税、両方を行っている場合は、まとめて寄付金控除として申告できますが、それぞれの制度の要件を満たしているか確認が必要です。
- 申告を忘れたら?: 確定申告が必要なのに申告を忘れてしまった場合、本来納めるべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税がかかることがあります。気づいた時点で早めに自主的に申告することをお勧めします。
まとめ
会社員の方がクラウドファンディング支援を行った場合でも、寄付金控除を受けたい場合や、一定額以上の一時所得がある場合には、確定申告が必要となる可能性があります。ご自身の支援がどのタイプに該当するのか、確定申告が必要な基準に当てはまるのかを確認し、必要な場合は期間内に申告手続きを行いましょう。
確定申告は難しそうに感じられるかもしれませんが、国税庁のウェブサイトなどを活用すれば、ご自身で手続きを進めることが十分に可能です。この記事が、皆様のクラウドファンディング支援に関する確定申告の手続きを進める上での一助となれば幸いです。ご不明な点があれば、税務署の相談窓口なども活用してみてください。