寄付型クラウドファンディング支援は税金が減る?控除額の計算と申告手順を解説
はじめに
クラウドファンディングで、特定のプロジェクトや活動を応援するために「寄付型」の形式で支援をされた方もいらっしゃるかと思います。純粋な応援の気持ちで行った支援ですが、確定申告の時期が近づくと、「この支援は税金に何か影響があるのだろうか?」「税金が安くなることはあるのだろうか?」といった疑問をお持ちになるかもしれません。
結論から申し上げますと、寄付型クラウドファンディングへの支援は、一定の要件を満たす場合、「寄付金控除」の対象となり、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。
この記事では、寄付型クラウドファンディング支援がなぜ寄付金控除の対象となるのか、具体的に税金がいくら減る可能性があるのか、そしてそのための確定申告の手順について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
寄付金控除とは?
寄付金控除とは、国や地方公共団体、特定の公益法人などに対し「特定寄附金」を支出した場合に受けられる所得控除の一つです。この控除を受けることで、所得税や住民税の計算において、寄付した金額の一部を所得から差し引くことができ、結果として税額が軽減されます。
寄付型クラウドファンディング支援が寄付金控除の対象となるケース
すべての寄付型クラウドファンディングへの支援が寄付金控除の対象となるわけではありません。控除の対象となるのは、支援先のプロジェクトが「特定寄附金」として認められる場合です。
具体的には、以下のいずれかに該当するプロジェクトへの支援が対象となる可能性が高いです。
- 国や地方公共団体に対する寄付(ふるさと納税もこれに該当しますが、クラウドファンディングの形式で行われるものも含まれます)
- 特定の公益増進法人などに対する寄付のうち、財務大臣が指定したもの
クラウドファンディングのプロジェクトページや、プラットフォームのヘルプページなどで、そのプロジェクトへの支援が寄付金控除の対象となるかどうか、また、その証明書(寄付金受領証明書など)が発行されるかどうかを必ず確認してください。
注意点:リターンがある場合
寄付型クラウドファンディングでは、金額に応じて「リターン」が設定されている場合があります。このリターンが高価な物品やサービスである場合、税務上の扱いが複雑になることがあります。純粋な寄付と見なされず、リターン部分が一時所得と見なされたり、寄付金控除の対象外となったりする可能性もゼロではありません。
一般的には、リターンが感謝状や活動報告など、経済的価値がほとんどないものである場合は、全額が寄付金控除の対象となるケースが多いです。高価なリターンを受け取った場合は、個別の状況によって判断が異なるため、不安な場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。この記事では、一般的な寄付金控除の計算と手続きに焦点を当てて解説します。
寄付金控除で税金はどれくらい減る?控除額の計算方法
寄付金控除には2種類の方法がありますが、多くの場合は以下の計算式で算出される金額が所得から控除されます(所得控除)。
- 寄付金控除額 = (年間寄付金額の合計 ※1) − 2,000円
※1:年間寄付金額の合計は、所得金額の40%が上限となります。
この計算で算出された「寄付金控除額」が、あなたの所得から差し引かれます。所得から差し引かれた金額に対して、あなたの所得税の税率を乗じた分だけ、所得税が軽減されます。住民税についても同様に軽減されます。
具体的な計算例
例えば、課税される所得金額が300万円で、所得税率が10%の方が、寄付金控除の対象となるプロジェクトに年間合計5万円を寄付した場合を考えます。
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寄付金控除額の計算: 5万円(寄付金額) − 2,000円 = 4万8,000円 (※この4万8,000円が、所得から差し引かれる金額です)
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所得税の軽減額の計算: 4万8,000円(寄付金控除額) × 10%(所得税率) = 4,800円 (※所得税が4,800円安くなります)
これに加えて、住民税からも原則として「寄付金控除額(4万8,000円) × 10%」が税額控除として差し引かれるため、さらに4,800円の住民税が軽減されます(自治体によっては税率が異なります)。
この例の場合、合計で約9,600円(4,800円 + 4,800円)の税金が軽減されることになります。
このように、寄付金控除を受けることで、寄付金額の一部が実質的な税負担の軽減につながることが分かります。
寄付金控除を受けるための確定申告の手順
寄付金控除を受けるためには、原則として確定申告を行う必要があります(会社員で年末調整を受けている方も、寄付金控除を受ける場合は確定申告が必要です)。
1. 必要書類の準備
確定申告で寄付金控除を適用するために最も重要なのが、「寄付金受領証明書」などの必要書類です。
- 寄付金受領証明書: クラウドファンディングの運営者やプロジェクト実行者から発行されます。確定申告に必ず添付または提示が必要となる書類です。この証明書には、寄付した日付、金額、支援先の情報などが記載されています。通常、プロジェクト終了後、一定期間を経て発行されますので、忘れずに受け取り、大切に保管してください。証明書の発行タイミングや方法は、プロジェクトやプラットフォームによって異なりますので確認が必要です。
- 源泉徴収票(会社員の場合など): 確定申告書を作成する際に、給与所得などの金額を記載するために必要です。
- マイナンバー関連書類: 確定申告書にはマイナンバー(個人番号)の記載が必要です。
2. 確定申告書の作成
確定申告書は、税務署の窓口で入手するか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。現在は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して、オンラインで作成・提出するのが便利です。
確定申告書には、主に以下の箇所に寄付金控除に関する情報を記載します。
- 申告書 第一表・第二表:
- 第一表の「所得から差し引かれる金額」欄にある「寄附金控除」の項目に、上で計算した寄付金控除額(年間寄付金額の合計から2,000円を引いた金額)を記載します。
- 第二表の「寄附金控除に関する事項」欄に、寄付先の名称(プロジェクト実行者名など)、所在地、寄付金額などを記載します。寄付金受領証明書を見ながら正確に転記してください。
3. 確定申告書の提出
確定申告書の提出方法はいくつかあります。
- e-Tax(電子申告): 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書を、インターネット経由で提出する方法です。マイナンバーカードとカードリーダーが必要になる場合や、税務署でID・パスワード方式の登録を行う方法があります。自宅から申告できるため便利です。寄付金受領証明書はe-Taxで提出する場合、その内容を入力することで提出を省略できる場合がありますが、税務署から提示または提出を求められることがありますので、必ず保管しておいてください。
- 郵送: 作成した申告書と必要書類を、所轄の税務署に郵送する方法です。
- 税務署の窓口: 所轄の税務署に申告書を持参して提出する方法です。
提出期間は、通常、毎年2月16日から3月15日までです(年によって変更される場合があります)。この期間内に提出しないと、控除が受けられなくなるため注意が必要です。
申告時の注意点
- 寄付金受領証明書の保管: 確定申告に必須の書類です。紛失すると控除を受けられなくなる可能性がありますので、確実に受け取り、大切に保管してください。
- 対象となる寄付かどうかの確認: プロジェクトが「特定寄附金」の対象であるかを事前に必ず確認してください。
- 他の寄付との合計: 寄付金控除は、その年の1月1日から12月31日までの1年間の寄付金額を合計して計算します。他の対象となる寄付(ふるさと納税など)がある場合は、それらも含めた合計額で計算します。
- ワンストップ特例制度は利用できない: ふるさと納税などで利用できる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」(確定申告が不要になる制度)は、寄付型クラウドファンディング支援には原則として適用できません。寄付金控除を受けるためには、ご自身で確定申告を行う必要があります。
まとめ
寄付型クラウドファンディング支援は、要件を満たせば寄付金控除の対象となり、税負担を軽減できる可能性があります。控除を受けるためには、支援先のプロジェクトが対象となるかの確認、寄付金受領証明書の取得、そしてご自身での確定申告が必要です。
確定申告は初めてで不安に感じられるかもしれませんが、国税庁のウェブサイトや確定申告書等作成コーナーを利用すれば、手順に沿って進めることができます。この記事で解説した計算方法や手順を参考に、ぜひ寄付金控除の適用にチャレンジしてみてください。
ご自身の状況に応じた具体的な税務上の判断や手続きについて不明な点がある場合は、最寄りの税務署や税理士にご相談されることをお勧めします。