確定申告とクラウドファンディング支援

これを知っておけば安心!クラウドファンディング支援の確定申告で間違いやすいポイント徹底解説

Tags: クラウドファンディング, 確定申告, 会社員, 注意点, 一時所得

はじめに

クラウドファンディングを通じて、応援したいプロジェクトを支援された方もいらっしゃるかと思います。その支援が、確定申告とどのように関係するのか、疑問や不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

確定申告に不慣れな場合、クラウドファンディング支援に関する税務処理で、つい「うっかり」間違いやすいポイントがいくつか存在します。これらのポイントを事前に把握しておくことで、スムーズに確定申告を済ませることができます。

この記事では、クラウドファンディング支援の確定申告において、多くの方が間違いやすい、あるいは勘違いしやすいポイントを具体的に解説し、それぞれの正しい知識と対処法をご紹介します。

クラウドファンディング支援の確定申告でよくある間違い・勘違い

クラウドファンディング支援の種類(寄付型、購入型、投資型など)や受け取るリターンの内容によって、税務上の扱いが異なります。この違いが、確定申告の際に間違いやすい大きな要因となります。

ここでは、特に個人の方が支援者として関わった場合に間違いやすいポイントをいくつかご紹介します。

勘違い1:購入型のリターンは全て「一時所得」だと思っている

購入型クラウドファンディングでは、支援金額に応じて物品やサービスなどのリターンを受け取ることが一般的です。このリターンを受け取った場合、「一時所得」に該当するケースが多いですが、全てが一時所得になるわけではありません。

例えば、受け取ったリターンが生活用の動産(家具、家電など、通常生活に必要な物品)で、その価額が取得価額(支援した金額)よりも明らかに低い場合や、市場価格が極めて低いと認められる場合は、所得税の課税対象とならないことがあります。

また、事業として継続的にクラウドファンディング支援を行い、リターンを仕入れや経費としているような場合は、一時所得ではなく「事業所得」や「雑所得」となる可能性も考えられます。

正しい知識: 購入型クラウドファンディングのリターンは、その性質や価額によって税務上の扱いが異なります。一時所得となる場合が多いですが、非課税となるケースや、他の所得区分となる可能性もあります。リターンの内容と取得価額(支援額)を照らし合わせて判断することが重要です。

勘違い2:少額のリターンだから申告しなくて良いと思っている

一時所得には、年間50万円の特別控除があります。このため、「一時所得の合計額が50万円以下なら確定申告は不要」という情報を目にすることがあるかもしれません。

しかし、会社員の方などで年末調整を受けている場合、給与所得以外の所得が「20万円以下」であれば確定申告が不要になるというルール(「20万円ルール」)があります。この「20万円」は、一時所得の場合は特別控除を差し引く前の収入金額ではなく、特別控除や必要経費を差し引いた後の所得金額で判断します。つまり、一時所得の収入が年間50万円以下であっても、他の所得(例えば、アフィリエイト収入や原稿料などの雑所得)と合算した結果、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要になります。

正しい知識: 一時所得の年間特別控除は50万円ですが、他の所得との合計額によっては、一時所得の収入金額が50万円以下であっても確定申告が必要になる場合があります。特に会社員の方は、給与所得以外の所得の合計額で申告が必要か判断する必要があります。

勘違い3:寄付型支援の証明書がないと寄付金控除を受けられないと思っている

寄付型クラウドファンディングで、特定の団体(NPO法人や学校法人など)への支援が税制上の優遇措置(寄付金控除など)の対象となる場合があります。この控除を受けるためには、通常、支援先の団体が発行する「寄付金の受領証明書」が必要です。

しかし、特定のクラウドファンディングプラットフォームが発行する年間を通じた「寄付金の受領証明書」や、電子データでの証明書などが、税務署で認められるケースもあります。また、証明書の発行には時間がかかる場合や、プラットフォームによっては発行手続きが必要な場合もあります。証明書が手元に届かないからといって、控除を諦める必要はありません。

正しい知識: 寄付金控除を受けるためには「寄付金の受領証明書」が必要ですが、クラウドファンディングプラットフォームや支援先の団体の対応によって、紙以外の形式や、特定の時期にまとめて発行される場合があります。証明書がない場合でも、プラットフォームのマイページなどで確認できる支援履歴や、振込明細などが参考になる場合もありますので、支援先の団体やプラットフォームに確認してみることをお勧めします。

勘違い4:リターンの送料や手数料を経費にできると思っている

購入型クラウドファンディングのリターンを受け取った際に発生する送料や、プラットフォームへの手数料などを、一時所得の「必要経費」として差し引けると思っている方がいるかもしれません。

一時所得の計算において必要経費として認められるのは、その収入を得るために「直接かつ不可欠な支出」に限られます。購入型クラウドファンディングにおける支援金額そのものは必要経費に該当せず、受け取ったリターンが事業所得や雑所得に該当する場合を除き、送料や手数料を一時所得の計算上の必要経費として差し引くことは難しい場合が多いです。

正しい知識: 一時所得の計算では、収入を得るために直接かかった費用のみが必要経費となります。クラウドファンディング支援における送料や手数料は、一時所得の必要経費として認められないことが一般的です。リターンが事業所得や雑所得に該当する場合は経費算入の対象となる可能性もありますが、その判断には専門知識が必要です。

勘違い5:確定申告の期限を過ぎても大丈夫だと思っている

確定申告には、毎年決まった提出期限があります(通常は2月16日から3月15日)。この期限を過ぎてしまうと、「期限後申告」扱いとなり、本来納める税金に加えて「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があります。

申告の必要がないと思っていて後から必要だったことが分かった場合や、うっかり期限を過ぎてしまった場合でも、自主的にできるだけ早く申告することで、加算税などが軽減される場合があります。

正しい知識: 確定申告には提出期限があり、期限を過ぎるとペナルティが課される可能性があります。申告が必要な場合は、必ず期限内に手続きを行いましょう。もし期限を過ぎてしまった場合は、速やかに税務署に相談し、期限後申告の手続きを進めることが重要です。

これらの間違いを避けるための具体的な対策

クラウドファンディング支援に関する確定申告での間違いを防ぎ、スムーズに手続きを進めるためには、以下の点を心がけましょう。

  1. 支援したプロジェクトのタイプとリターン内容を正確に把握する: 自分が支援したクラウドファンディングが「寄付型」「購入型」のどちらに該当するか、どのようなリターンを受け取ったのか(または受け取る予定か)を正確に確認しましょう。プラットフォームのマイページや支援完了時に届くメールなどに情報が記載されています。
  2. 所得の区分を正しく判断する: 受け取ったリターンが「一時所得」「雑所得」「事業所得」のどれに該当するか、あるいは非課税となるか、慎重に判断します。判断に迷う場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談することを検討してください。
  3. 関連書類を整理・保管する: 支援した証拠となるメール、プラットフォームからの通知、寄付金の受領証明書、リターンの内容が分かる資料、支援金額やリターン金額が分かるものなどを大切に保管しておきましょう。これらの書類が、所得の計算や控除の適用に必要な場合があります。
  4. 他の所得も考慮し、申告が必要か確認する: 会社員の方であれば、給与所得以外の年間所得の合計額を確認します。クラウドファンディング支援による所得と、他の副業や副収入による所得を全て合算して、20万円ルールに該当するかどうかを判断します。
  5. 早めに準備を開始し、期限内に申告する: 確定申告の時期が近づいたら、早めに必要書類の準備を始めましょう。e-Taxを利用すれば自宅から申告できますし、郵送での提出も可能です。不明な点があれば、税務署の相談窓口などを活用し、必ず期限内に申告を完了させましょう。

まとめ

クラウドファンディング支援の確定申告は、受け取るリターンの内容や他の所得状況によって、その取り扱いが変わるため、複雑に感じられるかもしれません。しかし、この記事で解説したような間違いやすいポイントと、それぞれの正しい知識を理解しておくことで、不要な不安を減らし、スムーズに手続きを進めることができます。

ご自身の支援内容をしっかりと確認し、必要な情報を整理することから始めてみてください。もし判断に迷う場合は、一人で抱え込まず、税務署の相談窓口などを利用することも有効な手段です。

正確な知識を持って、クラウドファンディング支援に関する確定申告を乗り切りましょう。