複数のクラウドファンディング支援、まとめて確定申告する手順
はじめに
クラウドファンディングで複数のプロジェクトを応援されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれ少額であっても、確定申告が必要になるケースがあるのか、あるいは、まとめて申告する際にはどのように計算すれば良いのかなど、不安を感じているかもしれません。
このページでは、複数のクラウドファンディング支援を行った方が、確定申告をスムーズに進めるための具体的な手順について解説します。確定申告に不慣れな方にも分かりやすく、一つずつ確認しながら進められるように説明いたします。
複数のクラウドファンディング支援、なぜまとめて考える必要があるのか?
クラウドファンディング支援が税務上の扱いとして「寄付金控除」の対象となる場合や、「一時所得」として課税される可能性がある場合、確定申告の要否を判断する基準や、申告する際の金額は、原則としてその年の1月1日から12月31日までの合計額で判断します。
したがって、複数のプロジェクトに支援を行っている場合は、それぞれの支援額やリターン、税務上の分類を確認し、それらを合算して申告手続きを行う必要があります。
支援したクラウドファンディングのタイプを確認する
まず、ご自身が支援したクラウドファンディングが、税務上どのタイプに該当するかを確認することが重要です。主なタイプと税務上の一般的な扱いは以下の通りです。
- 寄付型: 特定の団体やプロジェクトへの支援で、リターンが感謝状や活動報告など、経済的な価値を持たないものや著しく低いものである場合。要件を満たせば「寄付金控除」の対象となる可能性があります。
- 購入型: 商品やサービスなどのリターンを受け取るもの。受け取るリターンが支援額に対して経済的な価値を持つ場合、「一時所得」として課税される可能性があります。
- 投資型: 収益の分配などを目的とするもの。この場合は「雑所得」や「配当所得」など、異なる所得区分となることが一般的です。
複数の支援がある場合、これらのタイプが混在している可能性があります。それぞれの支援がどのタイプに該当するかは、プロジェクトの内容やプラットフォームからの情報をご確認ください。特に寄付型の場合は、プロジェクトが税額控除の対象となる団体等が行うものである必要があります。
ケース別:複数のクラウドファンディング支援の確定申告手続き
ご自身が支援した複数のクラウドファンディングが、どのような税務上のタイプに該当するかによって、確定申告での扱いが変わります。主なケース別に手続きのポイントをご説明します。
ケース1:すべて寄付型で、寄付金控除の対象となる場合
複数のプロジェクトがすべて寄付型で、かつ、それぞれの支援先が税額控除の対象となる団体等である場合、確定申告ではそれらの寄付金(支援額)の合計額を「寄付金控除」として申告できます。
- 必要な情報: 各プロジェクトへの支援金額、支援した団体等から発行される「寄付金の証明書(寄附金控除の対象となることを証明する書類)」
- 申告手続きのポイント: 確定申告書第一表の「寄附金控除」欄に、その年に支出した対象となる寄付金の合計額を記載します。第二表にも寄付先の情報等を記載します。確定申告書を提出する際には、必ず「寄付金の証明書」を添付または提示する必要があります。
ケース2:すべて購入型で、リターンが一時所得に該当する場合
複数のプロジェクトへの支援がすべて購入型で、受け取ったリターンの経済的価値が一時所得に該当する場合、それぞれのプロジェクトから得た一時所得の金額を合計して申告の要否を判断し、必要であれば申告します。
一時所得の金額は、原則として「総収入金額(リターンの経済的価値) - 収入を得るために支出した金額(支援額など) - 特別控除額(最高50万円)」で計算されます。複数のプロジェクトから一時所得がある場合、それぞれのプロジェクトごとの一時所得を計算し、その合計額から特別控除額50万円を差し引いて、課税される一時所得の金額を計算します。
(例) * プロジェクトA: リターンの価値 30万円、支援額 25万円 → 一時所得 5万円 * プロジェクトB: リターンの価値 40万円、支援額 35万円 → 一時所得 5万円 * プロジェクトC: リターンの価値 60万円、支援額 55万円 → 一時所得 5万円
この場合、合計の一時所得は 5万円 + 5万円 + 5万円 = 15万円 となります。ここから特別控除額50万円を差し引くと、課税される一時所得は0円となり、原則として確定申告は不要です(給与所得以外の所得が一時所得のみで、その金額が20万円以下であるため)。
ただし、これはあくまで計算例であり、リターンの価値判断は難しい場合があります。不明な点は税務署等にご確認ください。
- 必要な情報: 各プロジェクトの支援額、受け取ったリターンの内容と経済的な価値が分かる資料。
- 申告手続きのポイント: 課税される一時所得がある場合、確定申告書第一表の「一時所得」欄に計算した金額を記載します。計算過程を示す書類などを保管しておくと良いでしょう。
ケース3:寄付型と購入型のリターン(一時所得)が混在する場合
これが最も複雑なケースかもしれません。複数の支援の中に、寄付金控除の対象となる寄付型支援と、一時所得に該当する購入型支援がある場合、それぞれを区別して計算し、申告書に記載する必要があります。
- 寄付型支援: ケース1と同様に、対象となる寄付金の合計額を「寄付金控除」として申告します。
- 購入型支援(一時所得): ケース2と同様に、一時所得に該当するリターンの合計から一時所得の金額を計算し、課税される一時所得がある場合は「一時所得」として申告します。
これらは所得税の計算において異なる項目として扱われます。給与所得がある会社員の場合、給与所得以外の所得(一時所得など)が20万円以下であれば確定申告が不要となる場合がありますが、寄付金控除を受けるためには所得額にかかわらず確定申告が必要です。複数の支援がある場合は、ご自身の状況に応じて申告の要否を判断してください。
複数の支援情報を整理する
複数のクラウドファンディング支援の確定申告を円滑に進めるためには、事前の情報整理が不可欠です。以下の情報をプロジェクトごとにリスト化することをお勧めします。
- プロジェクト名
- 支援した年月日
- 支援金額
- クラウドファンディングのタイプ(寄付型、購入型など)
- 受け取ったリターンの内容
- 受け取ったリターンの経済的な価値(購入型の場合)
- 寄付金の証明書の有無、またはリターンに関する資料
これらの情報をまとめることで、合計額の計算や、ケース別の手続きを判断しやすくなります。
具体的な申告書の記載方法
複数のクラウドファンディング支援がある場合でも、確定申告書の記載箇所は単独の支援の場合と基本的に同じです。ただし、金額を合計して記載する必要があります。
- 寄付金控除: 確定申告書第一表「寄附金控除」欄に、その年の対象となる寄付金の合計額を記載します。第二表「寄附金控除」欄には、支援先の名称、所在地、寄付金の合計額などを記載します。
- 一時所得: 課税される一時所得がある場合、確定申告書第一表「一時所得」欄に計算した金額を記載します。計算の詳細は確定申告書第三表(分離課税等に関する計算書)の「一時所得」欄や、所得税の確定申告書付表(一時所得がある場合の計算書)などに記載が必要になる場合があります。
具体的な申告書の様式や記載方法は、国税庁のウェブサイトで最新の情報をご確認ください。e-Taxを利用する場合は、画面の案内に従って合計金額や必要な情報を入力していきます。
申告時の注意点
- 書類の保管: 寄付金の証明書や、購入型支援のリターンの価値を示す資料などは、申告の根拠となります。必ず申告期限後も一定期間(原則7年間)保管しておきましょう。
- 合計額の計算: 複数のプロジェクトがあるため、合計額の計算間違いがないように注意してください。
- 不明点があれば相談を: ご自身のケースが複雑で判断に迷う場合や、計算方法に不安がある場合は、管轄の税務署や税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
複数のクラウドファンディング支援がある場合でも、それぞれの支援のタイプを正確に把握し、必要な情報を整理すれば、確定申告手続きを進めることができます。寄付型の場合は合計額で寄付金控除、購入型で一時所得に該当する場合は合計の一時所得で判断・計算を行います。
この記事が、複数のプロジェクトを応援された方の確定申告の不安を解消し、手続きの一助となれば幸いです。ご自身の状況に合わせて、適切な申告を行ってください。